災害に備える中小企業のBCP|事業継続力強化計画認定制度

自然災害が多い日本では、BCPが注目を浴びています。

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)のことです。

事業継続力強化計画認定制度では、地震、台風、大雨などの災害に備えて、BCPに取り組む中小企業を認定します。

認定を受けることで、さまざまなメリットがあります。

この記事では、中小企業庁の事業継続力強化計画認定のメリット、計画の作り方、申請方法についてご紹介します。

もっと詳しく知りたい方は、中小企業庁のホームページをご覧ください。

事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業のメリット

金融支援

①日本政策金融公庫による低利融資

設備投資に必要な資金について、低利融資を受けられます。

設備資金の利率について、基準利率から0.9%引下げることができます。

②信用保証協会による保証枠の拡大

事業継続力強化計画の実行にあたって、民間金融機関から融資を受けるとき、信用保証協会による信用保証において、追加保証や保証枠の拡大が受けられます。

③中小企業投資育成株式会社による投資対象要件の緩和

事業継続力強化計画の実行にあたって、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)も、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能になります。

④日本政策金融公庫による海外金融機関に対する債務の保証

海外支店又は海外子会社が、日本政策金融公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受けるとき、日本政策金融公庫による債務の保証を受けられます。

税制措置

中小企業防災・減災投資促進税制では、事業継続力強化計画に従って取得した設備等について、取得価額の20%の特別償却が適用できます。

通常の減価償却費とは別に20%の経費を利益から差し引くことができ、減税の効果があります。

対象となる設備は、「自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する減価償却資産」となります。

具体的には、自家発電設備、揚水・排水ポンプ、制震・免震装置、浄水装置、変圧器、 配電設備、照明設備、貯水タンク、火災報知器、消火設備、排煙設備、格納式避難設備、止水板、防火・防水シャッ ターなどが該当します。

補助金の優先採択

ものづくり補助⾦、⼩規模事業者持続化補助⾦、事業承継補助金などにおいて、審査の加点対象となり、補助金採択の可能性が高まります。

このほか、地方自治体が実施する制度にも、優先採択が適用されるものがあります。

事業継続力強化計画の作り方

事業継続力強化計画は、企業が単独でする「事業継続力強化計画」と、複数の企業が連携してする「連携事業継続力強化計画」があります。

ここでは、単独でする事業継続力強化計画の作り方を解説します。

中小企業庁のホームページから、事業継続力強化計画申請様式をダウンロードすることができます。

様式に従って、作成する項目は次のとおりです。

1. 名称等

事業者名や代表者氏名、資本金、業種などの基本情報を記入します。

2.事業継続力強化の目標

自社の事業活動の概要

自社がどのような事業を営んでいるのかを記入します。

業種等に加え、自らの事業活動が担うサプライチェーンにおける役割または地域経済などにおける役割を記入する必要があります。

事業継続力強化に取り組む目的

何を目的として事業継続力の強化を図るのかを記入します。

具体例は次のとおりです。

  • 人命(従業員・顧客)を守り、地域社会の安全に貢献する
  • 自社の経営を維持するとともに、取引先への影響を軽減する
  • 供給責任を果たし、顧客からの信用を守る
  • 従業員の雇用を守り、地域の活力を支える
  • サプライチェーン全体への影響を軽減させる
  • 社会からの要請に応える

事業活動に影響を与える自然災害等の想定

事業活動を継続するにあたって必要な自社の拠点ついて、事業活動に影響を与える自然災害を1つ以上想定します。

国土交通省や地方自治体のホームページにあるハザードマップや、J-SHIS(地震ハザードステーション)等を確認し、想定される自然災害等を記入します。

自然災害の発生が事業活動に与える影響

想定される自然災害が、自社にどのような影響を及ぼすかを検討します。

影響は、「事象」と「脆弱性」を掛け合わせた形で記入します。

具体例は次のとおりです。

事象:地震により大きな揺れに見舞われる
脆弱性:予想される震度に対し、建物の耐震対策が行われていない

影響:xx地震等により、震度xx以上の揺れに見舞われた場合、△△の 耐震対策が行われていないため、建物が倒壊する

3 事業継続力強化の内容

(1)自然災害等が発生した場合における対応手順

次の項目ごとに、初動対応の内容と対応時期、事前対策の内容を記入します。

  • 人命の安全確保
  • 非常時の緊急時体制の構築
  • 被害状況の把握、被害情報の共有
  • その他の取組み

「従業員の避難方法」、「従業員の安否確認」、「非常時の緊急体制の整備」、「被害状況の把握」、「被害情報の共有」については必ず記入する必要があります。

連絡先一覧など、平時の取組みを災害対応として活用することも重要です。

(2)事業継続力強化に資する対策及び取組み

次の項目ごとに、現在の取組みと、今後の計画の取組み案を記入します。

  • 自然災害等が発生した場合における人員体制の整備
  • 事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入
  • 事業活動を継続するための資金の調達手段の確保
  • 事業活動を継続するための重要情報の保護

上記項目のうち、いずれか一つ以上の記入が必要です。

自社の事業継続上必要な項目や、対策が十分ではない事項を検討しましょう。

(3)事業継続力強化設備等の種類

税制優遇を受けるため、導入する設備等の詳細を記入します。

税制優遇を活用しない場合は記入不要です。

(4)事業継続力強化の実施に協力する者の名称等

事業継続力強化を進めるにあたって、中小企業を取り巻く関係者の協力を受けるときに記入します。

具体的には、サプライチェーンにおける親事業者、損害保険会社、金融機関、地方公共団体、商工会及び商工会議所などの協力です。

(5)平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組み

計画の実効性を確保するために、平時から行う取組みを記入します。

次の3点全てについて、自社の取組みを記入する必要があります。

  • 平時の取組み推進について、経営層の指揮の下実施する体制を整える
  • 年1回以上、訓練や教育を実施する体制を整える
  • 年1回以上、事業継続に向けた取組み内容の見直しを計画する

4. 実施時期

本計画の実施時期を記入します。

実施期間は、3年以内です。

5. 事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及び調達方法

事業継続力強化に係る対策について、必要な資金の額とその調達方法を記入します。

特に税制優遇や金融支援を受ける場合、必ず記入します。

6. その他

関係法令の遵守等、その他必要事項を確認し、該当するものにチェックを付します。

関係法令の遵守については、チェックが必須となっています。

事業継続力強化計画認定の申請方法

管轄する経済産業局宛てに、必要書類を送付します。

計画申請から認定までの、標準処理期間は45日です。

認定を受けると、認定通知書と計画申請書の写しが交付されます。

認定を受けた事業者は、中小企業庁のホームページでにおいて事業者名、住所等が公表されます。

事業継続力を高める

災害は突然発生します。

直面した災害に対応しきれない中小企業は、廃業や事業縮小を余儀なくされ、従業員を解雇しなければならなくなります。

顧客や社会からの信用を失墜することもあります。

災害の影響を最小限に留めるには、平時からの備えと、緊急時の適切な対応が重要となります。

いま、新型コロナウイルス感染症という大災害の渦中にあって、多くの中小企業が苦境に立っています。

この苦境から脱け出すことが最優先ですが、今後も何らかの災害が必ずやって来ます。

今のうちに事業継続力を高めて、災害に負けない会社にしておきましょう。

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